「お菓子くれなきゃ悪戯しますよ。」



道端で偶然出会ったに、突然、そんなことを言われた。






「・・・・・は?」

何で俺がお前に菓子をやらなきゃいけねぇんだよ。





という意味を含めて一言発すると、頭一つ分背が小さい彼女はご丁寧に『ちっちっち』と指を振りながら、今日がハロウィンであることを告げた。

「あー・・・・っそ、ハロウィンね。」
「そうです。だからお菓子下さい。」
「んなもんあるわけねぇだろ。」

大体、何でハロウィンだからって俺がお前に菓子をやらなきゃいけねぇんだよ。

そういうのはもっと常識的で良心的な・・・そう、例えば、ラディッツとかに頼むもんだ。


「ラディんとこ行けよ。」
「駄目です。ラディッツ先輩は、こういう行事の時期は宮内のお手伝いとかで忙しいから相手してくれないんです。」
「ちっ、役に立たねぇ。」
「っていうか私はターレス先輩からお菓子が欲しいんです。」

そんな、多少幼さを感じさせるとはいえ、最早到底餓鬼とは呼べない年齢の女に真顔で菓子をねだられても。


めんどくせぇ、との要求をそのままに再度歩き始めると、やっぱり後ろからついてきやがった。




「せーんーぱーいー!!」
「あーもううぜぇし!大体ハロウィンなんてそんなメジャーな行事でも何でもねぇだろ!?」

確かに店によっては内装をハロウィン仕様にしたりカボチャグッズの販売を始めているところもある。
だけれども、それはクリスマスの時期に比べれば本当に大人しいもので、そんなモノをわざわざ買う奴はサイヤ人の中では間違いなく少数派だ。


最も、がその少数派に属しているということに関しては、何の疑問も持たねぇけどな(もともとちょっと頭おかし・・・いや、変わってるし。)



「くれないんですか?」
「やらねぇ。」
「・・・・じゃぁ悪戯しますよ。」
「あぁ?やれるもんならやってみろ。」
「先輩、悪戯って別に真っ向から勝負挑むとかそういうわけじゃないんですよ?体力勝負だけが悪戯じゃないですよ?」


それから、ボソリと、
『靴の中に画鋲入れたり朝目覚めたら隣に裸のごつい男が寝てて吃驚ドッキリ★な先輩の写真を隠し撮りしてやる』
と呟いた。


「ぁ、今『地味で陰湿なイジメじゃねぇか』とか思いましたね?」
「いや、別に思ってねぇし。」
「地味で陰湿なものこそタチ悪いんですよー。例えばホラ、ミミズとかって意外とキモチワルイでしょう?」
「いや、つかドーデモイイし。」


は可愛い、とは、思う。
もともとはラディッツの知り合いで、何かそういう経緯で知り合って、気づけばいつも「ターレス先輩」と後ろをつきまとってくるようになっていた。
戦闘力は下級戦士らしく決して高くはないが、その分頭の回転は早く、ドクター達からはそれなりに気に入られているらしい。

俺にとって女はいつでも唯の雌でしかなかったが、コイツは違う。
ある意味で俺に最も近いところにいる女であり人間だとも言うことができる。



だが、ソレとコレとは、別だ。



大体、ハロウィンだからという理由で菓子が貰えるっていうんなら、俺がコイツに貰ってもおかしくねぇんじゃねぇか?



「・・・・なぁ、。」
「はい?」

立ち止まって見下ろすと、は瞳をキラキラさせて見上げてきた。
いや、確かに、そういうところは可愛いけどよ・・・・


「トリックオアトリート。」
「・・・・へ?」
「ハロウィンなんだろ?お前が俺に何かくれてもバチは当たらねぇだろ。」
「えー、駄目ですよ、ソレじゃ。」
「何で。」
「ネンコウジョレツ、って言葉知ってます?」
「・・・・知ってる。」

但し俺が知ってる年功序列は、こういう場で使う言葉ではなかった筈だけどな。



「ターレスせんぱーい。」
「お前うぜぇ・・・・つか何でそんな欲しがるんだよ。」
「え、だからハロウィン・・・」
「違う。俺じゃなくてもいいだろ?っつってんの。」
「・・・・先輩、よくそれで今まで何人もの美女を落としてきましたね。」
「何?」
「だからー、いつも言ってるじゃないですか。先輩が好きだからに決まってるでしょう、そんなの。」


他の人から貰っても嬉しくも何ともないです、ハロウィンって機会に託けて先輩から何か貰おうと思ったんです。




あまりにも臆せずに真っ直ぐ爆弾発言をかましてくるものだから、思わずこっちがたじろいでしまった。




「・・・・・お前、俺のことスキなの?」
「だからいつも言ってるじゃないですか、聞いてなかったんですか!?」
「いや、そういや言ってたな。」

ふーん、と、もう一度立ち止まり考える。

考えながら、そういや此処って滅多に人が通らねぇ道だよな、と無駄な情報を引き出す。


「・・・・わかった、やるよ。」
「え!?ほんとですか!?」
「お前甘党だっけ?」
「はい、あ、でもターレス先輩がくれるなら別に何でも・・・・」

『いいです』
そう続く前に、の腕を掴んで、壁に押し付けた。


「・・・・先輩・・・・?」
「じゃぁ、すっげ甘いモンやるよ。」





『お前が溶けるぐらい、甘い悪戯をな。』






耳元で囁くと、は可愛らしく頬を染めた。










何がどうめでたいのかはわかりませんが、とりあえずハッピーハロウィン★