「・・・アレ、珍しいね。今日は一人?」
明日は槍どころか大砲でも降ってくるんじゃないの、と声をかけた女―――は、ターレスの隣に腰掛けた。
「何で一人なの?フラれた?」
「ばーか、たまには一人で飲みてぇ時もあるんだよ。」
「そっかそっか、一人になりたいのかー・・・折角様が直々にお相手して差し上げようと思ったのにそれは残念。」
くすくすと笑いながら、はちゃっかり自分の飲みたいものを細かく注文をつけて店番に伝える。
「お前いつ帰ってきたんだ?」
「んー?昨日。」
「きの・・・・んなとこで飲んでて平気なのかよ。」
「ヘーキヘーキ、私がそんなヤワじゃないの知ってるでしょ。大体あんたこそ何で今日に限って一人なのさ。」
「別に理由なんかねぇよ、単に引っ掛けんの面倒だっただけだ。」
「・・・ほどほどにしとかないとそのうち刺されるよ・・・。」
「何、もしかして妬いてんのか?」
「ふはっ!!あんたも冗談上手くなったねー」
カラカラと笑いながら、頼んだ酒に少し口をつけた。
ターレスが本気で言っているわけではない、というのはも十分承知している。
無論、出会った当初はその容姿に引かれターレスも何度か口説き落とそうと試みたのだが・・・
突然迫られてもは照れるでも怒るでもなく勿論誘いに乗るでもなく、いつもひらりひらりと上手くかわしていた。
ターレスはターレスで、元々一人の女に執着しない、所謂典型的プレイボーイ君だ。
結局、ずるずると二人の関係は良いオトモダチ―――もとい、『悪友』として現在まで続いてしまっている。
「・・・酷かったんだろ?」
「ん?何が?」
「怪我、とか。」
「あー、んー・・・まぁ酷かったといえば酷かったけど、こればっかりは仕方ないからねぇ。」
「昨日此処で相当話題になってたぞ。」
「ヤダ、皆心配してくれてたの?」
『私って愛されてるぅ』
とか何とか言いながら、またくすくすと笑った。
ターレスの言ったことは、強ち嘘でもない。
はその容姿は勿論、生粋のサイヤ人らしく誇りが高く性格もサバサバしているため同種からは好かれやすい。
サイヤ人は愛だの恋だのには淡白な種族だが、それでも中には彼女に恋愛感情を抱いている者もいる。
そんな彼女が瀕死の重傷で帰ってきたのだというのだから、話題に上らない筈がない。
「医療班の人にも言われちゃった、『あんま無理するな』って。でも無理するなって言われても手抜くわけにはいかないしさぁ、万全だと思う計画立てて、それで行ってやられちゃうんだから仕方ないよね。」
「もっと実力つけろ、ってことじゃねぇの?」
「酷っ、これでもちゃんと努力はしてますぅ。そりゃアンタらに比べたら劣るかもしんないけどその辺は頭脳でカバーよカバー。」
「・・・・・・・・・・まぁ確かに、さ。」
得意気に自らの頭脳を自慢していたが、ぽつり、と。
「正直、やっぱ羨ましいなって思うよ。戦闘力は兎に角・・・体格とかばっかりは、どうしようもないじゃん。」
「ちゃんと鍛えてんだろ?」
「鍛えてるよ、でも男女の体格の差ってのはもうどうしようもないんだって。医療班の奴、きっぱり『諦めろ』とか言いやがったもん。」
実際、はかなりの訓練や実践を積んでいるにも関わらずかなり華奢だ。
綺麗に筋肉はついているものの、戦闘中の彼女は一体その体のどこからあんな力を出しているのかと疑いたくなる程。
自分ではどうしようもない力の差に、ほんの少し、憂いを帯びた表情。
「(・・・・え・・・・?)」
「・・・?ターレス、どしたの?」
「・・・ぁ、いや・・・・それよりお前、ピアス開けてたっけ?」
「あぁ、コレ?」
はそっと自分の右耳に触れた。
そこには、銀のシンプルなピアス。
「こないだ貰ってね、昔の穴はもう閉じちゃってたからまた開けたの。」
「貰った?」
「そうそう、それが聞いてよ!あの噂のザーボン様からの頂き物なのよコレ!!」
吃驚だよねー、と話すに、ターレスは何となく面白くない感情を抱いた。
確かに、シルバーのピアスは彼女によく似合ってはいるけれど。
・・・・似合っては、いる、けれども。
「勿体無いから、って遠慮したんだけど・・・・・・・あ、アレって、」
「あーっ、ターレスこんな所にいた!」
「もう、探したんだからっ!!」
が目線を向けた先からは、可愛らしいオンナノコ二人組の声。
二人はたたたっと走り寄ってきて、早速ターレスの腕に自らの腕を絡ませた。
「もー、今日に限っていないんだもん・・・もうちょっと構ってよねー。」
「あ、さん怪我はもう大丈夫なんですか?」
「うん、もう全然平気。」
「もー昨日皆心配してたんですよ、瀕死の重傷だ、っていうから・・・こんなとこで飲んでないで寝てなきゃダメですよ、また倒れたらどうするんですか!」
「あは、ごめんね心配かけて。」
それじゃぁ、とは席を立った。
「帰んのか?」
「うん、可愛いオンナノコから忠告も受けちゃったし。アンタらの邪魔する気もないし、帰って大人しく寝るよ。」
「相変わらず一人だろ?寂しくなったら俺んとこ来いよ、いつでも相手してやるぜ。」
「あはは、さすがのターレスでも一人で三人相手はキツイでしょ。」
じゃぁね、と帰る間際にターレスに向けられた彼女特有の穏やかな笑顔に
トクン、と。
「(・・・・・・・・まさか・・・・・・・・・・な。)」
両側に女をはべらせているターレスは、まだこの感情に名前をつけることができない。
惑星ベジタボゥでの出来事。
ヒロインは美人さんなので、昔からタレさんは『手を出せるものなら出したいあわよくば』とか思ってましたが、現在の感情はまた別物。
プレイボーイは本物の恋に疎いのよ、という偏見。しかし恋に堕ちる瞬間を書くのは難しい。
ついでに、うちのヒロインは同性からも好かれやすい傾向にある模様(単なる管理人の趣向)