「馬鹿な奴はお断りだな。」
「ふーん・・・・あ、ちょっとそれ私のだっつーの!!」
唯の、会話。
何てことのない、会話。
手を伸ばして隣の女のお弁当箱から玉子焼きをひょいと一つ拝借(勿論返す予定などない)
そんなオプションだけで、何てことのない会話が、賑やかになるんだな・・・・と、思った。
「一個ぐらいいいじゃねーか。」
「アンタそう言って今まで何個私のおかず奪った!?」
お弁当を匿うようにしっかりとガード、そのままキシャーッと威嚇の声まで聞こえてきそうな目ではターレスを睨み付けた。
(ちっ、サイヤ人も地球人も食べ物にはうるせぇんだな・・・)
一つ賢くなったぞ、と、目の前の黙っていれば、そう黙ってさえいればどこぞのお嬢様オネエサマかと思うぐらい綺麗な顔をした女からおかずを取るのを諦めた。
「・・・・馬鹿な女は嫌いだけど、」
いい加減話題を変えなければ末代先まで呪われそうだ、とターレスは先ほどの何てことのない会話の続きを始めた。
「あんま頭良すぎる女もダメだな。」
「何ソレ。」
話題が変わったからといって安心はできない
相変わらずそんな目をしながら、しかしは応答だけはしっかりと返してやった。
心の中で『アタシチョー偉い』と自分を褒め称えながら。
「馬鹿はウザイけど、頭イイ奴は遊ぶとなると面倒。」
「うっわサイテー。」
最後の一口を口に入れながら、うげぇ、と顔を顰めてみせた。
「・・・でもあんたさぁ、何だ、入学式?の時、初対面なのに私のこと口説いてきたジャン。
それで『実は私いつも模試で全国一位なんだ★』とか『頭の螺子が百本足らないみたいなの★』とかだったらどうするつもりだったの?」
「それはそん時考える。世の中そんな都合の良い女ばっかじゃねーもん、俺が言ってるのはあくまで理想論。」
「はーん・・・・アレだね、『頭が良くて顔も良くてスタイルも良くて性格はちょっと意地悪だけどでも私のことは凄く大切にしてくれるの★』とか言っちゃうオンナノコよりも理想高いんだね。」
「・・・・・まさかの好みって・・・・・」
「ちょ、冗談!クラスの子が今日話してたのよ。」
勿論私はその台詞聞いた瞬間と顔を見合わせて噴出しちゃったけどね。
あははー笑いながらと付け加えると、今度はターレスが顔を顰めた。
「じゃぁ、お前の好みは?」
「好みぃ?さー・・・・考えたことないなぁ。ま、少なくともアンタじゃないことだけは確かだよ。」
「ひっでー、俺こんなに真面目に言い寄ってんのに・・・・」
悲しさを装って言ってみると、は先ほどの三倍増しのうげぇという顔をして見せた。
「でもさ、ターレスが本気で恋愛してるとこなんて想像できない。」
「どういう意味だコラ。」
「アレ、違ってた?なら謝るけど。」
「・・・・・・遠からず。」
でしょ?とは笑い、ターレスはちっ、と軽く舌打ちをした。
楽しけりゃ、気持ち良けりゃそれでいいじゃん。
そう口にしようとして、止めた。
とはもう二週間以上こうして弁当を食べる仲で、かといって二人は付き合っているというわけではないからきっと関係は『友人』ということになるのだと思う。
事実ターレスはに好感を抱いていたし、ぎゃーぎゃーと騒ぎつつも何だかんだで自分の傍にいるも同じなのだろう。
顔が広く付き合いが多くとも好感を持つ相手が多いというわけではないターレスにとって、そんなに本音を吐き出すのは至極自然なこと。
もしもこれがラディッツなら、何の考えもなく口にしていただろう、台詞。
だけど、何故か、止めた。
「・・・・あんまり泣かしたらダメだよ。」
「何だよ今更。」
「何となく。一応言っとこうかなぁ、と思って。」
相変わらず笑ったままのからは何も読み取れない。
本当にオンナたちに同情してそう言っているのか、自分がその対象となることを恐れているのか。
『好きだ好きだ』と言いすぎれば逆に疑われやすくなるということを知っていたターレスは今までにその類の言葉を吐いたことは少なかった(曰く『セクハラはしまくりだけど』だそうだ)
だから、もしかしたら前者の可能性のほうが強いかもしれないな、と思った。
「ていうか何でこんな話してたんだっけ?」
「が振ってきたんだろ。」
「・・・・・・・そうだっけ。」
ヤバイ痴呆かな、と呟きながら弁当箱を包むの髪が、風に吹かれてサラサラと揺れる。
こうして見ると、本当に、美人なのだ。
ここまで美人なら逆にアホの子であってくれたほうが落としやすく楽しみ甲斐もあっただろうに。
(・・・・言ったら殺されそうだな。)
自分に遊ばれるためにアホになってくれ、なんて
末代先まで呪われるどころか、自分の代で血が途絶えてしまいそうだ。
「ちゃんがさー、『はアレでなかなか賢いんだよ』とか言ってたんだけど・・・ギャグだよな?」
「いきなり何!いきなりのくせに何その失礼さ!!」
「・・・・そうか、ギャグだよな。あー、ちゃんに悪いことしたな・・・笑ってやれなくて。」
「だから違うって!様はマジ天才だから!天賦の才を享け賜っちゃってるから!!」
コノヤロウ、弁当箱ぶつけるわよ?
は引き攣った笑みを浮かべ手はわなわなと震えている。
ターレスは、そういえばこういうタイプとは今まで恋愛ゴッコを楽しんだことがなかったな、と何気なく考える。
「・・・・あ、で思い出した、帰りにアイス奢ってもらわなきゃ。」
「脅しは良くねーぞ。」
「違う、トランプ!トランプで勝ったの!あんた私のこと何だと思ってんのよ!」
「黙ってりゃ美人のくせに性格で大損してるカワイソウなジョシコーセー。」
「性格破綻についてはアンタにだけは突っ込まれたかないわね。」
ふーんだ、とわざとらしく口に出しながら、は立ち上がりスカートの上のゴミを払った。
「戻るか?」
「ターレスは此処にいるといいわ、出来れば一生。」
「かっわいくねー」
「だーれのせいでそうなってると思ってんのよ!」
べぇ、と軽く舌を出してから、は一人ぱたぱたと階段を駆け降りて行った。
「あんにゃろ、マジで先行きやがった・・・・」
今更追いかけることをしないのは、きっと明日もこんな風に言い合いながら屋上で時間を共にするのだろうという予感という名の確信があるから。
(美人だし、割と体型も良いし・・・・手に入りゃラッキーなんだけどよ。)
何せ、あの性格。
手に入れるまでに苦労をするような恋愛ゴッコは出来れば避けたい。
プライドの高いオンナを落とすのも嫌いではない、多少の苦労もまた恋愛ゴッコの一興ではあるが、彼女はそんな一筋縄にはいかないだろう。
もとより人間には『遊ぶタイプ』と『遊ばれるタイプ』と『理解不能』なタイプがあって、ターレスにとってのは間違いなく一番最後のタイプであった。
(・・・・ま、それはそれでおもしれぇか。)
風が、吹いた。
春の暖かな、惑わす風。
合言葉は「あわよくば」
落としてやろうという努力はしないけど、機会があれば是非とも遊ばせて頂きたいと思いつつ、でもでもなんだかアレ?なターレス。