合意じゃない強引は身の破滅を呼びます
―――やって、しまった。
今日は遅刻することもなく、いつものように登校して・・・・
が下駄箱を開けると、中には一通のお手紙。
お約束通り、内容は「放課後裏庭へ」
ちなみに、差出人は不明。
本人にあまり自覚はないようだが、実ははかなりモテる。
顔や雰囲気には人目を引くものがあり、頭の回転もそこそこなので成績も悪くはない。
性格は多少どころか大いに問題ありだが、根は優しくむやみに他人を傷付けることはしない。
そのため、中学時代や高校入学当初は月一、二回の頻度で告白されたものだ。
が、付き合い始めてからはそれもめっきりなくなった。
言わずもがな、そこにはあの見た目からしていかにも関わりたくない相手No.1であるターレスの存在が大いに関係している。
それが、久しぶりにこんなものを頂いてしまった。
「何だソレ。」
「ん?呼び出し状。」
「・・・行くのか?」
「うん、まぁ一応。」
「・・・・・・・。」
勿論は「お断りする」ために行くのだが、やはりターレスにとっては面白くない。
「ちょっと、そんな顔しないでよ、」
「行くな、って言ったら?」
「・・・・は?」
「わざわざ行く必要ねぇだろ。」
「いや普通にあるでしょ、行ってちゃんとケリつけてくるよ。」
こういうのは放っておくと後でとんでもないことになる可能性がある。
以前不可抗力で呼び出しに応じることができなかった時、相手がいわゆるストーカー行為にまで及んだこともあった。
多少のことには動じない程度の精神力と体力を備えているは、自らそいつをとっ捕まえ警察につきだしたのだが。
「別に断りに行くんだから問題ないじゃん。」
「駄目だ、絶っ対駄目だ!」
「ちょ、ターレス・・・?」
「俺たちが付き合ってんの知らねぇわけじゃねぇだろ、手ぇ出すとは良い度胸じゃねぇ
か。」
「何も手出されるって決まったわけじゃ・・・・」
「・・・・行って犯されでもしたらどうすんだよ。」
「はぁ!?んなわけないでしょ(あんたじゃないんだから)とにかく私は行くから・・・す
ぐ終わるとは思うけど、何なら先帰ってても、」
「・・・・・・・、勝手にしろ!」
驚くをよそに、ターレスはさっさと自分の教室へ行ってしまった。
「・・・・・何なのさ、もぅ・・・・・」
そして、冒頭の一文へと戻るわけである。
「あははっ、ターレスも可愛いとこあんだね・・・・ふはっ」
「、笑いすぎだよ・・・・」
何と無く朝起こったことをに話したところ、彼女は腹を抱えて笑い出してしまっ
た。
「ごめんごめん、まぁターレスって独占欲強そうだもんねぇ。」
にしみじみと言われて、は過去の様々な出来事を思い返した。
「・・・・・別に、嫌いではないんだけどさぁ。」
言葉の通り、はターレスのそういう子どもっぽい一面を嫌っているわけではない。
時には可愛いとすら思ってしまうぐらいで・・・・
ただ、今回ばかりはどうしようもない。
まさかすっぽかすわけにもいかないだろう。
「あんたそーゆートコ律儀よね。」
「え、だってはっきりさせとかないと嫌なんだもん。」
「・・・・で、行くんだ?」
「うん、どうせターレスには今更言っても聞かないだろうし。好きなようにしてから後で何とかするよ。」
大体、何故呼び出しに応じるだけでこんなことにならなければならないのか・・・
は、小さく溜め息を吐いた。
放課後。
に言った通り、は帰る用意を済まして裏庭へと足を運んだ。
「(ぁ、あの人かな・・・・)」
校舎にもたれかかっている彼がどうやら例の手紙の差出人のようだ。
・・・とりあえず、様子から察するに今回の呼び出しは「決闘の申し込み」とかではないらしい。
「あのー・・・・」
「はっ、はい!」
「コレ、くれた人ですか?」
はヒラヒラと例の手紙を持ち上げ相手に見せた。
「そ、そうです・・・・来てくれてありがとうございます。」
「あーいやいや、どうせ暇だし別に大丈夫ですよ。」
良かった、と微笑む彼は、あまり悪い人には見えない。
こんなにも穏やかな人が、よくもまぁ自分みたいなのに好意を持ってくれたものだとはしみじみ感心した。
「あの、どうしても言いたいことがあって・・・」
おぉう、来るなら来い!!
「俺と、付き合って下さい!!」
「・・・・へ?」
「その、入学した時からずっとさんのこと気になってて・・・さん、綺麗だし、目立つし・・・・」
「ぁー・・・・えぇと、あの、ね。私、付き合ってる人いるんだ。」
「知ってます。」
おいおいおいおいおい、ちょっと待ってくれよ。
ターレスとお付き合いを始めてからも、別に告白されなかったとかそういうわけではない。
中には「気持ちだけどうしても伝えたくて」なんていう、言われたこっちが胸を痛めたくなるような人たちだっていた。
だからこの青年に「好き」をすっ飛ばして「付き合ってくれ」と言われただけでも驚いたのに、しかも、知っているのか、コイツは。
あの傍若無人超絶俺様万年性欲男の存在、を。
「えーと、御存知なら話は早いんですけど・・・・ごめんなさい、だから貴方とは付き合えません。」
話を濁しても仕方がない、心を鬼にして・・・とまではいかなくても、ちょっと心に棘を生やしてみてはっきりと告げると、青年は俯いて黙り込んでしまった。
「(あー、悪いなぁとは思うけどだって仕方ないじゃんそんなのさああぁぁあああ)」
「・・・・・でも、」
「え?」
「でも、アイツより俺の方がさんに釣り合う自信があるんです。」
・・・・・・・・
き た よ 。
ちょっと待ってくれ、それを決めるのは私じゃないのか?
いやもしかしてそれは遠回しに「チャンスをくれ」って言ってるのか?
でもだから貴方とはお付き合いできませんってば、大体アイツ「より」釣り合う自信って何よ、今だって私らが釣り合ってるなんて微塵も思ってないっつーの!!
・・・なんていうの思いを青年が知る筈も無く、彼は尚話(一人語り)を続ける。
「アイツ、昔っから良い噂聞かないし・・・中学から一緒だったけど、その頃から酷いもんでした。だからさんと付き合ってるって聞いたときは正直本当に驚いて・・・
最初は、さんが幸せならそれでいいやって思ったんです。でも、アイツさんと付き合い出してからも全然変わった様子ないし・・・」
「ぁー・・・でもさ、それは見た目とかの問題でしょ?中身はそんな酷い奴でもないよ(普段は)」
「っ、でも、やっぱり俺はさんが好きなんだ!!」
ぐっと両腕を捕まれ、壁に押し付けられる。
「ぇ、ちょ、離し・・・・」
「俺と付き合って下さい・・・・」
「ちょ・・・・・・しつこい!!」
ドスッ
「〜〜〜〜〜〜っっ、」
の膝は見事にみぞおちに命中した。
「あんたとは付き合わないっつってんだろ、いい加減にしろよこのカスが。」
ふぁっ○、と中指を立て蹲る男を冷たく見下ろし、は鞄を拾ってとっとと帰って行った。
「(あーもー何なのよアイツはっ!!)」
そりゃターレスは見た目怖いし素行悪いし意地も悪いけどさ!!
でもでも私が惚れてるから付き合ってるんだ、それをなーんであんな奴に・・・・!!
「・・・・・・あ。」
ふと我に返っては足を止めた。
ついついいつもの癖で待ち合わせ場所の下駄箱に戻ってきてしまったが、朝のやり取りから考えて多分今日はターレスはいないだろう。
「なーにやってんだ、私は・・・・」
と思いながらも下駄箱を覗いてみると、
「あ、れ・・・・?」
「遅かったじゃねぇか。」
そこには、ヤンキー座りでを待つターレスの姿があった。
「帰ったんじゃなかったの!?」
「行くなとは言ったけど待たねぇとは言ってねぇ。」
少し不貞腐れたように言うターレスが、可愛くて仕方ない。
は相変わらずヤンキー座りのままのターレスに、ぎゅぅ、と抱きついてみた。
「っ、おい、」
「割とねー、しつこい感じの奴だったんだ。」
「・・・・だから行くな、っつっただろ。」
「・・・うん。でもさ、放っといてストーカーとかになられても困るじゃん。
でね、あんまりしつこくて、腕掴まれてムカついたからちょっと脅そうと思ってさ。」
細いの腰に腕を回しながら、ターレスは珍しく黙って話を聞いていた。
「・・・・・足上げたら、膝がみぞおちに入っちゃったみたいv」
「・・・・・・・・・お前なぁ・・・・・・・・・・」
「しょうがないじゃん、だってムカつく奴だったんだもん!初対面なのに普通に触ってくるし!」
「相手ちゃんと生きてんのか?」
「い、生きてるよ・・・・(多分)」
「・・・・良かったな。」
から腕を解き、よっ、とターレスは立ち上がった。
「・・・・ありがと、ね。」
「何。」
「待っててくれて。何だかんだ言って、ターレスって優しいよネ。」
「・・・・別に、俺がしたいと思ったからしただけだ。」
行くぞ、と差し伸べられた手に、は素直に自分の手を重ねた。
「・・・・・・・で。」
「ん?」
「どこ触られたって?」
「だから、腕掴まれ・・・・」
「後でお仕置きな。」
「はぁ!?」
「俺は優しいんだろ?だったら安心して素直に抱かれとけ。」
本当に優しい人は、そんな科白は吐きません・・・・。
の突っ込みは、心の中だけで虚しく響いた。
餓鬼っぽいタレさんが書きたかった、という話。
うちの(少なくとも龍球学園の)タレさんは割と餓鬼っぽいです。独占欲強いのですぐヤキモチ妬きます。
ヒロイン、鬱陶しく思いつつも普段強引なタレさんのそんな一面が可愛い・・・とか、思ってくれてたらいいなぁ。
てか、もっとカッコイイタレさんとか他キャラとかも出したいのに文才が全然追いつかないです。ふぁっ○!!