辰馬くんは陽気に踊って、銀ちゃんは野次を飛ばして、桂ちゃんは苦笑いをしながらも杯を傾けて楽しそう。
晋助は三味線を弾いて、私は歌った。数年前まで声も出せなかったなんて嘘のよう、此処が戦場だなんて嘘のよう。





「もう歌わねーの?」

「銀ちゃんこそ、向こうはもういいの?」


隣に腰を下ろしながら、さすがに疲れた、と銀ちゃんは苦笑い。そうだね、ちょっと疲れたかな、と私。
少し離れたところでは、晋助と辰馬を中心にまだ賑やかな宴が開かれてる。


「ずっりーよなぁ、アイツ。いつもは宴会なんて興味ねーって顔してるくせに、何だかんだで人気モンだもんなぁ。」

「そうだね、お酒好きなのも意外だわ。」

「なーんかいいとこ取りって感じだよなー」


あー畜生いいよなストレートヘアーの奴は!銀ちゃんは悔しそうに髪をわしゃわしゃと掻き毟った。


「いつもは銀ちゃんが人気者だからさ、今日ぐらいは晋助に譲ってあげたら?」

「えっ嘘マジで?もしかしてってば俺に惚れてたりする!?」

「あはは、うん、嫌いじゃないよ、銀ちゃん面白いもん。」

「うっそマジか!やっべー銀さん喜びで髪ストレートになりそう!」


騒ぐ銀ちゃんに笑いながら私は抱えた膝に顎を乗せてじっと周りを見渡した。
宴会独特の匂い、空気。お酒の匂いと熱気が混ざり合って、でも嫌いじゃない。みんなの笑い声に私まで嬉しくなる。
明日はこの中の誰が生きているのだろう、そんなことは考えない。逃げと思われてもいい、私には、私たちにはこの時間が確かに必要だった。


(意外と桂ちゃんもお酒呑むんだ・・・。)


徐々に瞼が重くなってきた。元々強くはないお酒が回って、身体が少し重い。こんなところで寝たらまた桂ちゃんに口うるさく言われるかな、そう思ってももう此処から動く気力は残ってない。
今はまだみんなの喧騒の中に身を置いていたい。このまま眠ればいい夢が見られそうな気がするの。


(晋助のあんな笑った顔、珍しいけど・・・凄く好き・・・・だ、な・・・)



「あれ、ちゃーん?・・・・あーあぁ、幸せそうな顔して寝ちゃって。後で桂に怒られても知らねーよ、銀さん。」


















「・・・・おい、起きろ、。」


ゆさゆさと身体を揺さぶられる感覚に目が覚めた。二日酔いになるほどは呑んでないから頭は痛くない、でもまだ眠気は冷めなくて視界がぐらぐらする。


「し、ん、」


どうしたの、と口にする暇も与えずに晋助はさっさと歩き出してしまった。
慌てて身体を起こして辺りを見回すと、みんな思い思いの場所で酷い寝相。酒瓶も転がったままで、後で片付け大変だなぁなんて思いながらみんなを起こさないようにそっと晋助を追った。


「晋助、どこ行くの?」

「いいから来い。」


ずんずん歩いて、遂に晋助は外に出た。つられて私も足を踏み出すと、少し冷たい風と日差しに目が眩んだ。


「まぶし、」

「目ぇ開けろや。」


初めは、薄っすらと、でもすぐに一気に瞼を押し上げた。


「わ、あ・・・」


綺麗な朝日に朝焼け。眠気も何もかも吹っ飛んで、馬鹿みたいにただただそこに立ち尽くして。



「見たかったんだろうが、これが。」

「う、うん、」


昨日とは少し違う、悪戯が成功したようなニヤリとした晋助独特の表情。
朝日は心が洗われる気がする、なんて、我ながら陳腐な台詞を口にしたのは出陣前のこと。甘い世界じゃないことはわかってるけど、挫けない芯の強さを保つためにも余計なものは洗い流してしまいたい、あの時はそう思ってた。


「覚えててくれたの?」

「あァ。」


徐々に朝日が昇っていく。朝日に照らされた大地は色を取り戻して、神秘の色は薄れて本来の色を取り戻していく。
晋助はそれ以上何も言わなくて、私もただじっとそれを見てた。



「・・・晋助、ありがとう。」

「どうせ明日は見られるかわかんねェ身だ。今のうちにせいぜいしっかり目に焼き付けとけ。」





綺麗な朝日も綺麗な大地もどうせ数時間後には血に染まる。素晴らしい目覚めを受け入れた瞳がこの先目にするのは流れる血ばかり。
それでも空はきっといつまでもどこまでも続いていて、私に明日などなくとも空は明日も変わらないのだろうとその美しさを願った。