「ねぇ、私やっぱり帰・・・・」
「今更何言ってんの!こーゆーの嫌いじゃないでしょ?」
「嫌いじゃないけど、気分じゃないっていうかダルいっていうかめんどいっていうか凄く帰りたい。」
「こないだあんたのなっがい買い物に付き合ってあげたのどこの誰だったっけ?」

・・・・ちゃん、笑顔が怖いデス。


さっきから何をごちゃごちゃやってるのかといいますと
ワタクシと友人のは、とあるお店の前に来ておりまして。
最近出来た此処は、どうやらかなり人気らしい。
ホストクラブみたいなもんらしいけど、肩書きとしてはそうではないらしい。


何にせよ、凄く、帰りたい。


「ホラ、行くよ!」
「ぁー・・・・」

に手を引かれてぐだぐだと。
美少女二名様ごあんなーい、てか。





「いらっしゃいませ!」

店に入ると、非常に爽やかな、青年・・・雰囲気としてはまだまだ少年という言葉が似合いそうな、少し髪が長い男の子が出迎えてくれた。

ちゃんいらっしゃい!」
「久しぶりだね悟天、ちゃんと働いてる?」
「働いてるよ!・・・・ところでそっちの人は?」
「ぁ、ども。です。」
「僕は悟天。よろしく!」

満面の笑みにつられて、思わず私も笑顔になる。
かっわいい子だなぁ。

「・・・・・ちゃんが連れてくる子はみんな可愛いけど、さんはまた格別だね・・・・」
「へ?」
「凄い、さん超可愛い!美人!笑った顔とか最高だよ!」
「ぇ、いゃ、そんな・・・・」


席に着く前から予想外に誉められて、思わず顔が熱くなる。
つか悟天くん、君の方がよっぽど可愛いよ。


「ね、だから今度とびきりの子連れてくるって言ったでしょ?」
「うんっ、ほんとに・・・ぁ、ごめん、先に席に案内するね!えっと・・・・」
「私悟飯くん!」

びしっと挙手をして、ばっちりご指名。
薄々気付いてはいたけど、、あんたばっちり此処に通っちゃってんのね・・・・










「ぁー・・・・ごめんちゃん、僕指名入っちゃった・・・・」
「いいよいいよ、気にしないで!」
「すぐに代わりの人寄越すから!ほんとごめんね!」

慌ただしく席を立つ悟天くんに笑顔で手を振る。
仕事とはいえ、いい子だなぁ・・・・


入店して早速は悟飯さんのところへ行ってしまったので、私は悟天くんに相手をしてもらっていた。
席について15分程度。
悟天君は指名のために別のお客さんのところへ行ってしまった。
目の前のテーブルに置かれたお酒はあまり減っていない。

「タイミング間違えたなぁ・・・・」

此処のお店が人気なのもわかる。
驚くほどイイ男揃いだし、内装を始め雰囲気もサービスも文句なし。


にも関わらず、やっぱりどうも気が進まない。


別に、ホストが嫌いなわけじゃない。
遊び方ぐらい心得てるし、お酒だって嫌いじゃない(寧ろ愛してます)

ただ残念ながら今日の私は偏頭痛モードで、此処に来る前、本当なら一回二錠の薬をそのあまりの効力のなさに四錠も飲んでしまった。

要するに、ワタクシ今日はお酒が飲めないのですよ。



に言っても心配かけるだけだしなぁ・・・・」
「ぁ、君が噂のちゃんのお友達?」
「!」

驚いて後ろを振り向くと、どうやらホストの一人らしい男が立っていた。

「隣、いい?」
「ぁ、はい、どうぞ・・・」

顔は悟天君に似てる・・・かな?
うん、パーツはそっくり。
でも髪型や肌の色、目つき、それに雰囲気が全然違う。
着崩したスーツが似合う彼は、椅子に座る仕草さえ妙に優雅だ。

「俺、ターレス。ごめんな、悟天の奴暫くは戻れそうにねぇんだわ。」
「ぁ、気にしないで、平気平気。」
「名前はちゃんでいいの?」
「うん。」
「・・・・・・・・・・・・」

社交辞令程度に微笑むと、ターレスの動きが止まった。

「・・・・どうかした?」
「ぁ、いや・・・・凄ぇな、ちゃんから話は聞いてたけどちゃんやべぇぐらい可愛いのな。」
「はぁ?べ、別にそんなこと・・・・」

真顔で感心したように言われて、ついつい動揺してしまう。
ホストクラブはそういう場所だとわかっていても、やっぱり慣れない。
心底、みんなまとめて眼科に連れて行ってあげようかとか考えてしまう。

「今日初めて?」
「そ、半ばに無理矢理・・・・」
「あぁ、ちゃんならやりそうだな。」

ふ、とターレスは笑った。
ねぇ、・・・・あんた一体どんな遊び方してんの?







「ありえねぇ!何それ、ちゃん本気で言ってんの!?」
「ちょ、そんな笑うことないじゃん!」
「だ、だっておま・・・・やっべマジ腹痛ぇ・・・・っ!」

ターレスは隣で本気で爆笑してる。
そこまで笑わなくても・・・・何がそんなにおかしいのさ!

「ぁー・・・・ちゃん、俺よりこの職業向いてんじゃねぇ?」
「何でよっ」
「だってマジおもしろ・・・・ふはっ、」

ターレスは目に涙まで貯めて笑う。

「もー、笑いすぎだってば!」
「ゃ、悪ぃ悪ぃ・・・・」

少し頬を膨らませると、相変わらず涙目のままのターレスに頭を撫でられた。
うん、やっぱホストクラブではかわいこぶって可愛がってもらうのが楽しいのよねー

「あれ、そういやちゃん殆んど飲んでねーじゃん。」
「ぁー、うん・・・・」
「アルコール苦手?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど・・・・・」

寧ろ大好きデス。

「じゃぁ飲めよ、もったいねーだろ?」
「あー・・・・」

言葉を濁す私にはお構いなしに、ターレスはどんどんお酒を注いでいく。

まぁ・・・・もともとお酒は強いし、少しぐらいなら・・・・・

「はいよ。」
「ぁ、ありがとう。」

「じゃ、乾杯v」


目を覗かれて微笑みかけられて、思わず心臓が跳ねた。






「ぅー・・・・」
「大丈夫か?」
「ちょっと酔った・・・・かも・・・・・」

ここぞとばかりにターレスに凭れかかり頭を彼の肩に預ける。
こんなイケメンくん次はいつ会えるかわかんないし、何より此処はそういう店だし。
やれることやっとかなきゃ損ってもんよ。

「頭ふらふらする・・・」
「外出るか?」

まさかコップ三杯でほんとに酔うとは・・・・・不覚。
さすが、鎮痛剤四錠の威力は恐ろしい。

「うん、ちょっと風当たってくる・・・・」

くらくらする頭を押さえて立ち上がると、隣でターレスも立ち上がった。

「俺も行く。」
「え、いいよ、一人で平気、」
「いーからいーから。ちゃんみたいな美人一人で外行かせらんねーって。」

寧ろついて行ける俺って役得じゃね?


にっこりと笑われては断ることも出来ず

「・・・・じゃぁ、お願いします。」





「わ、いい風・・・」
「寒くね?」
「平気、丁度イイぐらい。」
「そうか。」

なら良かった、とターレスは煙草に火をつけた。
そのまま、二人で階段に座り込む。

「凄いねぇ。」
「何が?」
「お店。超人気じゃん。」
「おかげさまで、な。」


こんな夜中に着崩したスーツで階段に座り込み煙草を吹かす彼は、見るからに『そういう仕事』に就いている人だ。
だけど、この人にはそれがとてもとても似合っているように思えた。

「久々に楽しかったよ。」
「ぁ、俺も。こんなイイ女の相手出来たしv」
「あは、そんな誉めなくてもちゃんとまた来て売り上げには貢献してあげるよ。」


笑いながらターレスを見上げると、彼は困ったように笑っていた。

「やっぱ伝わんねーよなぁ・・・・」
「何が?」
「・・・・いや、何でも。そろそろ酔い冷めたか?」
「うん、おかげさまで。ごめんね、他にもお客さんいたのに・・・・」
「俺が一緒にいたいと思ったから付き添ってんだから、ちゃんはんなこと気にしなくていいんだよ。」

ふ、と笑いかけられて、どきりと心臓が跳ねた。

向こうは仕事だってわかってるのに、どうしてもドキドキしてしまう。
今まではこんなことなかったのに・・・・

凄いな、ターレスってよっぽど仕事上手なんだなぁ。

「店、戻る?」
「んー・・・・いいや、そろそろ帰ろうかな。」
「うっそ、マジで?もう帰んの?」
「ん。・・・・ぁ、でもどっちみち一回お店には戻らなきゃ、お会計してないし。」

どうせ暫くはもあのままだろうし。

そう言って立ち上がろうとしたところを、ターレスに腕を掴まれ引き留められた。

「・・・・ターレス?」
「会計は次でいいぜ。ちゃん殆んど飲んでねーし。」
「う、うん・・・・・って、えぇ!?駄目だよそんなの!」
「つか、金はいらねぇ。」
「は?何言って・・・・・」

唖然とする間に頬に触れられ、気付いたときには視線少し上に彼の端正な顔。
目の前にははだけたシャツから覗く彼の胸元。

嫌でも、顔が熱くなる。





「ちょ、な・・・・・・・・・っ、」





ふと、唇に何かが触れる感覚。








「家どこ?送ってやるよ。」

ターレスのその一言に、ようやく我に返った。

「へ、き・・・・一人で帰れる・・・・・」

我ながら他に言うべきことがあるだろうと思ったけど、いきなりあんなことされたらそりゃ言うべきことも言えなくなる。

「そうか?この辺ヤバい店も多いから危な・・・・っておい!」

右手で口許を押さえたまま、駅まで一直線。


ヤバい、ヤバい、ヤバい。



このままじゃ、ホストにハマって貢いで破産なんて最悪な人生に転落だ・・・・!!











「・・・・やべぇ、ハマったかも。」



ちゃん、悟飯の隠し撮りやるからちゃんのアドレス教えて!』

それからすぐに店に戻りターレスがそう叫んでいたと知るのは、もう少し経ってからのこと。








「どんなタレが読みたいですか?」アンケで、一位と非常に近差で二位になったホストタレです。
ホストといえば女の子を口説きなれている、ということで、親し気というか馴れ馴れしいタレを書いてみたのですが・・・何か・・・ホストとは違うような・・・
男経験のないヒロインがそんなタレにドッキドキするという話も浮かんだのですが、そのネタは置いておくことにして(笑)
いまいち「萌え」が伝わらない文章だとは思いますが、少しでも皆様のご希望に添えていたならば幸いです。

アンケート投票、ありがとうございました!!