「〜〜〜ああぁぁあもうっ」
は、震えていた。
制服の冬服着用が認められるようになり、ようやく夏も去ろうとしているこの時期に頭から水を被れば、そりゃ誰でも震えずにはいられないだろう。
が、彼女が震えている理由の大半は、寒さからではなく怒りから来ている。
「コロス、ぜぇったいコロス、いや寧ろ死ぬより辛い生き地獄を見せてやる・・・・!!」
黒いオーラと共にふふふと笑うは、そんじょそこらの戦闘民族よりも恐ろしかったとか。
「失礼しまーす。18号先生いますかー?」
「何だ?・・・・じゃないか、保健室に来るなんて珍しいね。」
幸い、保健室には金髪美人の18号先生以外は誰もいなかった。
「って・・・・どうしたんだ!?その格好・・・・!!」
「あはは・・・・・いゃ、何かまぁ、色々とありまして・・・・・着替みたいなのあります?」
「ちょっと待って、今出すから・・・・それよりほら、まずはこれで拭いときな。」
棚から取り出したタオルを、頭からばさっとに被せた。
「ぁ、ありがとうございます・・・・」
思えば三日前、上靴を潰されたのが全ての始まりだった。
あの後花瓶は落とされるわ机に落書きされるわ廊下で足をひっかけられるわで散々な日々を送ってきた。
ついさっきも頭からばけつの水をぶっかけられ、奇異な目でを見る廊下の奴らに時々睨みを効かせながら、こうして震えつつ保健室へとたどり着いた。
ここ数日の異変にいち早く気付いた悟飯は、折角だから金色の戦士にでもなって脅してやりましょうかと至極真顔でえらく恐ろしいことを言ってのけてくれたが、それも丁重にお断りさせて頂いた。
出来れば自分の力で解決したかったし(大体何が『折角』なのだ)、悟飯にそんなことを頼めば今度はターレスと悟飯の間で面倒事が起きるだろうというのも理由の一つだ。
「いい加減何とかしないとなぁ・・・・」
「大丈夫かい?」
「まぁ、とりあえずは・・・」
「あんまり無理するんじゃないよ。」
無理に事情を聞き出そうとはしないながらも、自らの身を案じてくれる。
「・・・美人に心配されるっていいなぁ・・・・」
着替を済ませてへらっと笑ったに、18号は思わず苦笑した。
「―――、。」
「・・・・ん・・・・・・・・・?」
瞼を開けた瞬間視界に飛込んできたのは、金髪美人のお姉さんだった。
「もう授業も全部終わる時間だよ。制服も乾いたし・・・・どうする、もう少し寝とくか?」
「ぁ、いや、病気でもないのにベッド占領しちゃ悪いし・・・・おとなしく帰ります。」
「そう、じゃぁ気を付けなよ。」
「はい!何か色々すみませんでした。」
まさか借りた服のまま授業に出るわけにもいかず、は特別にベッドを借りて寝ていた。
が、制服が乾いたのならその必要も無い。
すっかり乾いた制服に着替えてからお礼を告げ、は保健室を後にした。
「・・・・あら、さん。」
保健室を出た矢先、廊下でわざとらしく名前を呼ばれ振り向いた先には
「・・・・貴方・・・・・」
恐らくこの一連の『ターレス様は渡さないわ!いけいけ、乙女の裏の顔』作戦(命名:)の首謀者であろう、
「・・・・・ごめんなさい、誰ですか?」
知らない女が立っていた(お約束)
「貴方が私の名を知る必要はないわ。もう服は乾いたの?」
「まぁ、おかげさまで。」
名乗ろうともしない嫌味な女の後ろでは、別の数人の女が睨みを効かせている。
「貴方に話があるの。屋上まで来てもらえるかしら?」
「ちょうど良かった、私もあんたらに言ってやりたいことがあったんですよ。」
にっこりと笑ったに女は顔をしかめたが、すぐに振り返り他の女子生徒と共に屋上へと向かった。
「何すか?話って。」
「貴方―――目障りなのよね。ターレス様から離れなさいよ。」
単刀直入な女の台詞に、は思わず吹き出してしまいそうになった。
「(いやだって、しかもターレス様って・・・・ターレス『様』って!つかあんだけ散々嫌がらせしといてやっぱり理由はそれなのかよ!!)」
「いい加減鬱陶しいのよね、ちょっと顔がいいからって調子に乗るんじゃないわよ!」
「別に調子に乗ってるわけじゃ・・・・」
「大体ターレス様もターレス様よ、こんな女のどこがいいんだか・・・・」
それまではお決まりの文句しか言えない女たちを冷めた目で見ていただったが、これまでの仕打のこともあり、いい加減苛々も溜り怒りも頂点に近くなってきた。
「ちょっと、」
「きゃっ」
「黙って聞いてりゃぎゃあぎゃあうるさいっての、そんなに私の魅力に疑問があるならあんたらが大好きなターレス様に直接聞けば?
あんたらがターレスを好きなことにも私を恨んでることにも文句はない、でもちょっとこれはやりすぎなんじゃない?」
胸ぐらを掴まれ至近距離で見るの瞳に、女の表情には恐怖の色が浮かんだ。
「好きならターレスに直接それを伝えなさいよ、それであいつがあんたらを選んだなら望み通り私は身を引いてやるわ。
でもねぇ、真っ向から勝負も出来ないようなやつに言われて別れるほど、中途半端な惚れ方してるわけじゃ――――」
恐怖に震えていた女が不自然に口元に弧を描いた、その瞬間。
「ぇ、ちょ・・・・何!?」
「残念ねぇさん、生憎ここにいるのは私たちだけじゃなかったのよ。」
突然後ろから捕えられ必死に暴れようとするものの、相手はかなり力を持っているらしくどうにもならない。
「離せこらっ、卑怯にもほどがある!!!!」
「いい気味ね、ここまででおとなしく身を引いていれば良かったのに…」
くすくすと笑う女たちに、はぎりぎりと唇を噛んだ。
「他の男の手にかかったあんたなんかすぐに捨てられてしまうでしょうね。」
まるで女の声が合図であったかのように、前からもう一人の男が近寄ってきた。
「ちょ…やだやだ触んないでよ、あぁもう離せよ殺すぞ!!!!!」
「おっと…少しおとなしくしてろよ、そうすりゃすぐ済むからよ。」
男がの顎に手をかけようとした瞬間
「何やってんだてめぇら。」
低い声と共に現れた光によって、男は吹き飛ばされた。
その場にいた全員が唖然とする中
「・・・・汚ぇ手で触んじゃねぇよ。」
「ぐあ・・・・っ」
どすっ、という重い音と共にの動きを封じていた男もその場に倒れ込んだ。
「うゎ、」
突然体を解放され前に倒れそうになったを片手で抱き止め、しっかりと自分の方に抱き寄せてからターレスは女たちを睨みつけた。
「てめぇら・・・・・」
普段から、ターレスは決して温厚な方ではない。
喧嘩っ早く血の気も少なくはない彼だが、それでも、もう一年以上一緒にいるでさえ、これほど『気』を膨らませているターレスを見た事はない。
「ターレス、」
「お前は黙ってろ。」
「(いや、どっちかっつーと当事者は私なんだけど・・・・)」
サイヤ人とはいえ、生憎ターレスは髪を逆立て目を青くするような特性は持ちあわせていない。
けれども、例えば悟空や悟飯、それにベジータが『超化』する時というのはこういう時なのだろう、と思った。
しかしはこういう―――怒りに我を忘れかけているターレスを、何故だか少しも怖いとは思えない。
それは怒りの矛先が自分に向けられていないからかもしれないが、何より
目つきはいつもより鋭いし、声も低いし
逞しい腕がしっかり腰に回され力を入れられているため、密着度も半端ないし
更に、自分のためにここまで怒りを露にしているのだときた。
―――この状況でこの思考、完全なアホである。
「・・・・おい、」
「へっ、」
「何て顔してんだ、お前。」
普段はあまり見れない表情をしている彼の横顔をぼーっと見ていると、突然目が合った。
「べ、別に普通の顔・・・・」
「どこがだよ、顔赤ぇぞ。」
「きき気のせいだよ、うん、気のせい!」
ターレスがわたわたと慌てるを不思議そうに見下ろしているうちに、女たちは逃げようとしたが―――
「そう簡単に逃げられると思ってんのか?」
自分がやり始めたことは最後まで責任持てよ、と、手をかざした
丁度その時。
「・・・・何をしている。」
嗚呼、これ以上面倒なことにならなきゃいいけど・・・・
現れた男を見て、は直感的にそう感じた。
書いてて非常に恥ずかしかった一品。おおおお約束すぎて笑いさえ通り越して寒いよコレ・・・!!
でも18号先生が書けて楽しかったです(キャラが違ってる気がしないでもないですが)
取り敢えず、うちのターレス様はヒロインを守るためなら一般ピーポー相手だろうが何だろうが平気で光弾ぶっ放します。