『何をしている。』


目の前に現れたのは、突然膨らんだターレスの気に気付いてやって来たのだろう、これまたこれでもかというほど重力に逆らった髪型をしている


「ベジータ先生!」


で、あった。





「退けよ、いくら王子とはいえ邪魔は・・・・」
「俺がいつ邪魔をすると言った?俺はただ何をしているのかと聞いているんだ。」

どこか貫禄の伺えるベジータの口調に、ターレスはおとなしく腕を下ろした。


、これはどういうことだ。」
「ゃ、えーと・・・」

ターレスを挟んで女の戦いやってましたというのは何か違う気がするし、苛められてましたというのも違和感がある。
さてどうしたものかと悩んでいると、先にターレスが口を開いた。

が、そこの男共にヤられそうになってたから助けたんすよ。」

くい、とすっかり伸びている男たちを顎で指した。

「ほう・・・・ではそこの女共は首謀者といったところか。」

何となくわかってはいたのだろう、ベジータがその『女共』に視線をやると、彼女たちはびく、と肩を震わせた。


「安心しろ、俺は強い者にしか興味はない。」
―――だが、お前たちのような姑息な者どもを野放しにしておくほどこの学校は腐っちゃいない。


その言葉に女たちはわっと泣き出し、そのままおとなしくベジータの後について屋上を後にした。
勿論、擦れ違い様にを睨みつけるのも忘れずに。


「・・・・何か・・・・・懲りないなぁ・・・・」
「おい、大丈夫なのか?」
「え?あぁ、うん・・・・」

それから、ごめんね、と一言。

「何?」
「何か・・・いっぱい迷惑とか心配とかかけちゃってるな、って・・・」

はこてん、と頭をターレスの胸に預けた。

「馬鹿、今更だろ。」
「うん・・・・」

両腕で抱き締めると、その細い肩が震えているのに気付いた。

「ったく・・・・」

怖かったのなら、最初から素直にそうやって泣いてしまえばいいのに。
どうして先に『ごめん』だなんていう謝罪の言葉を口にするのか。

「っとにどうしようもない奴だな、お前は。」
「ぅ"〜〜〜」



これだから、守ってやりたいと思う。


口先だけじゃない、体だけじゃない
本当に、心の底から―――ずっとずっと、をこの手で。



「帰ったら、これまでのこと全部聞くからな。」
「ぅん・・・・」

いつになく弱々しいの声に、ターレスは思わず苦笑した。













があの女生徒たちの処分について知ったのは、それから三日後のことだった。

「ベジータせんせー」

例のごとく職員室を開けると、今度はパンを咥えた悟空を目にすることもなく、真っ先にベジータを見付けた。

「また貴様か。」
「ひっど、生徒に向かって・・・こないだ借りたスリッパ、駄目にしちゃったから新しいの持ってきたんです。」

ずい、とスリッパの入った袋を前に出すと、ベジータは特に表情を変えることもなくそれを受け取った。

「そういえば、貴様あいつらについては聞いたのか?」
「あいつら?」

きょとんとして見上げてくるに、ベジータは何か妙なものを見るかのような視線を寄越す。


「・・・・まさかもう忘れたのか?」
「は?」
「この間の女共だ。」
「あ・・・・あぁはいはい、ちゃんと覚えてるんでそんなおつむが可哀想な子を見るような目で私を見ないで下さい。」

言葉が足りないベジータ先生が悪い、という反撃はこの際聞かなかったことにして、その詳細を話始める。

「あいつらは以前も同じようなことをしていたらしい、退学にしてやろうかとも思ったが・・・・」
「た、退学!?別にそこまでしなくても、」
「そう言うだろうと思ってな、今回は停学処分だ。」
それに、同じ校内にいたほうが貴様も復讐がしやすいだろう。

ベジータのその言葉に、は『あぁこれでこそ私が(ある意味)尊敬するベジータ先生だ』と思ったとか。



それからその件についての礼をしっかり述べ(例に漏れず「今更だ」と鼻で笑われたが、それも彼の優しさの一つだろうと勝手に解釈している)新しい上履きで小走りにターレスの元へと戻った。





「遅ぇ。」
「だから先行ってて良いって言ったのに・・・・」

む、と頬を膨らませたの頭をぽんぽんと撫でてから

「(・・・王子様に借りつくっちまったな)」

彼にしては珍しく、感謝の意を込めて『王子』に軽く礼をした。








「なぁベジータ、おめぇいつから気付いてたんだ?」

教え子の珍しい態度に少し驚いていると、その教え子と同じ顔をした男に声をかけられた。

「あいつが上履きを潰した、と言っていた時だ。」
「凄ぇなぁ、オラ全っ然気付かなかったぞ・・・・」
「貴様に気付かれるようじゃ、気付かれまいとしていたが可哀想だ。」

ふと、彼の愛妻が『何でかわかんないけどサイヤ人っていい男ばっかりなのよねぇ。』と呟いていたのを思い出した。
自分自身はサイヤ人、しかも男なので彼女の言っていることは全く理解できなかったが、地球人にとって彼らサイヤ人の持つ『絶対的な強さ』というのは魅力的なのかもしれない。

それに加え、ターレスはあの性格だ。今まで散々遊んできただろうし、その点は人一倍苦労もするだろう。


「・・・・・女というのは面倒だな。」

だがそこまでは自分の知ったことではない、と、ベジータは自らのデスクへ戻った。








「ところでターレスくん、君、明日は暇かね?」
「明日ぁ?別に予定はねーけど・・・・何だよ急に。」
「じゃぁわたくし、様が何かお礼をしてあげよう。」

なりに、ターレスやベジータに感謝していた。
もしもあのときターレスが来てくれなければ今こうして普通に笑えていたかどうかもわからないし、ベジータが来るのがあと少し遅ければ今頃ターレスは犯罪者だ。

・・・・但し、普通お礼というのは『してあげる』ものではないだろう、という突っ込みは避けられないが。


「ふーん・・・・お礼ねぇ。」

少し考え込むとターレスはがしっとの肩を両手で掴み

「なぁ、普通お礼ってのは相手がして欲しいことをするんだよな?」
「え?う、うん、まぁ普通は・・・・」
「よし、、お前いじめられっ子になれ。」
「・・・・は?」



「俺様がたっぷりいじめてやるからよv」



思いっ切り笑顔で言われ、一瞬何がしたいのか全くわからなかっただが―――




「・・・・・アタシ、やられたらちゃーんと復讐する女だヨ?」






勿論、そんな一言で大人しくなるようなターレスでは、ないのだけれど。







やっと終わりました、イジメ編。
ダラダラと長いような展開が早いようなでアレなのですが、少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
ヒロインにとってターレスくんは、ある意味最強で最悪のいじめっこです。