出来ることなら目の前の世界を愛したかったと願うのはそれすら罪なことでしょうか。


―――出来ることなら、と、








生まれた時から誰かに必要とされることも誰かを必要とすることも無かった。私は私のためだけに走り飛び回り殺して生きてきた。
それを寂しいと思ったことも悲しいと思ったこともない。だってみんながそうだったから。

フリーザを始めとする異形の生物がこの星に足を下ろしてから何かが少しずつ変わり始めた。皆はそれを良い方向への変化と捉えたけれど私には寧ろその逆に思えた。

上司のため、フリーザ様のため。

自分以外の誰かのために戦いを繰り返す。それは本当に誇り高き戦闘民族の姿だろうか?



「昔の方が好きだった」

そう零せば変わり者として扱われた。確かにフリーザが来てから、仕事をすれば相応の報酬が与えられるようになり、飢餓の心配はなくなった。
だけど、だけど違うのだ。この惑星を取り巻く空気そのものが変わってしまった。心の底ではフリーザの暴挙に苛立ちを感じているくせに我が身の保身のために笑顔を浮かべる。

そんな戦闘民族があっていいものか。





「全くそうだよなぁ。もうちょっと感情に忠実だったよな、昔のアイツらは。」


店のソファ席にどっかりと座った目の前の色黒の男は、権力ってのは怖いねぇ、なんて茶化したように首を振った。

言ってしまえばこの男、ターレスも変わり者の一人だった。「別に誰に必要とされるわけでもねぇんだからいてもいなくても良くね?」こんなことをケロリと言い放って長くこの惑星を離れていたのだ。
先日、数年ぶりに母星に帰ってきてみれば何とも腑抜けた同族が増大。帰る星間違えたかと思った、とは久々に再会した私に対する第一声だ。


「どうせ、またどっか行くんでしょ?ならあんまり関係ないじゃない。」

「それがさぁ、あの白いトカゲ野郎、『この星を管理しているのは私なのですから私の許可なしにこの星の外へ出ることは許しません』とか言いやがってよぉ・・・」

「へぇ・・・アイツらしいね。」


それはつまり、もう彼に星を出ることは許されないというのと同意だった。生きるも死ぬも自由だった以前に比べて、今の私たちは『生かされている』。
下級戦士に価値などないと言いながら、アイツらは下級戦士さえも自分たちの管理下に置かなければ気が済まない。戦闘において価値の無い下級戦士が実験のモルモットとして連れて行かれるのを見たこともある。
これを肯定する輩(そしてその中には下級戦士も多分に含まれている)が大半を占めているというのだから、まさに今のこの星は狂った世界そのものにしか思えない。




「・・・帰りたい、ね。」




逃げることは出来ないから、せめて。狂っていると知りながらも何を変える力も自分が持たないことも知っているから、せめて。

テーブルに突っ伏して呟けば頭を撫でられ、その掌の温かさは、帰りたいと願うあの頃と何も変わっていなかった。