「・・・・晋助?」

「やっと目ェ覚めたか。」


キョロキョロと辺りを見回して、は自分が布団に寝かされていることを漸く把握した。

随分と懐かしい夢を見ていた気がするが、そういえば、今の自分はあの夢の中の自分と同じ状態にあったのだ。



「あ、ごめんなさい、昨日・・・」

「・・・いや、いい。気にすんな。」


の布団の隣に胡坐をかいていた高杉は手を伸ばしての頬を撫でた。
高杉はいつもそうだ。あの頃と変わらず、の限界を見付けてはそこに至るより先にを引き上げる。本人も、ですら気付かない内に。
同時に、彼は他人の弱さを見付け出しそれを掌握し利用する術にも長けていると、旧鬼兵隊壊滅後には知った。他者の心を見抜くのに敏感なのだ。



「そういや、ヅラが来てたぞ。」

「え、桂ちゃん?」


何で、と隠しもせず表情に浮かべたに高杉は一連の経緯を教えてやった。あぁそうなんだ、桂ちゃんにもお礼言わなきゃねと納得したは未だ頬に添えられたままの高杉の手に己の手を絡めた。


「・・・ふふ、出産時みたいね。」

「何?」

「ねぇ、もしも私が子ども産むことになったら、その時もこうしていてくれる?」


突拍子もない言葉に、珍しく高杉は目に見えて驚いた。


「どうせ私は晋助以外の子どもは産まないもの。」

「・・・おめェは、たまにとんでもねーことを言い出すな。こんな世の中で餓鬼を産む気か?親が国崩しに励んでるとなりゃまた苦労すんだろうな、そいつも。」

「あら、いいじゃない。例え幕府から追い掛け回されてようが、父親がこんなに素敵なんだから。きっと素敵な子に育つわよ。」

「クク、生まれた途端に世の中がひっくり返って混乱状態に陥るかもしれねェぜ。」


そうは言いながらもも高杉もまるで悪戯好きの子どものような笑みを浮かべている。

はこの痛みを生命の痛みだと受け止めながらも、子を産むつもりなど毛頭ない。最も、突然の心変わりがないとは言えなくとも。
産むとすればその父親足るものは高杉しかいないということまでは想像出来るか、大切な命を奪われたことを理由に誰かの命を奪い続ける自分が新しい命をつくりだそうなどとは到底思えなかった。
恐らくそれは高杉とて同じこと。だからこそ、の冗談に冗談を返してやったのだ。


高杉は身を屈めて軽くに口付けた。


「いいぜ、お前が・・・奥さんがそうして欲しいってんなら、旦那は傍にいてやんねェとなァ。」


未来を語る二人の空気はただひたすらに甘くありながらどこか皮肉めいてもいたが、そこに現実味だけが微塵も含まれていなかった。