がっちりと頬を固定されているせいでどう足掻いても逃げることは不可能だ。壁に背中をびっちりと押し付けられ正面には高杉の身体。繋がった唇からは舌が差し込まれ、角度を変えるために一瞬だけ唇が離される僅かな瞬間には大きく息を吸う。すぐにその酸素すらも奪われてしまうのだけれど。
息苦しさと慣れた快楽に身体から力が抜けずるずると壁伝いに座り込んでも尚高杉は行為を止めはしなかった。ずるずると座り込んだまま、顎を伝う唾液も気にせずに、ただひたすら。
は眉根を寄せてぎゅっと目を閉じたまま高杉の着物を掴む。何度経験してもこの息苦しさと快楽の逃し方がわからないらしくいつもはこんな反応をする。その表情が見たくて高杉は接吻の時はあまり目を閉じない、ということを当然は知らない。

散々翻弄して涙まで浮かばせた後、漸く高杉はが思う存分酸素を取り入れることを許した。


「・・・毎回思うことだが、おめーよくそんなんで最後までもつよな。」


軽く肩を上下させているを見ての言葉だ。指摘を受けた当の本人は恥ずかしいのか顔を俯かせて身体を小さくした。
その身体をゆっくりと畳みに押し倒せば、まだ頬を赤らめたままは高杉を見上げた。


「慣れねェか。」

「う、うん・・・」


高杉に触れられることは嬉しいが、単純に恥ずかしいのだという。
緊張と羞恥心からか僅かに身体を硬くさせて高杉を見上げるにはどこにも死神の影は無い。怯えにも似た表情を浮かべているくせにしっかりと高杉の着物は掴んだままの姿は、三つ年下で、兎のような白い肌に猫のような目をして、己を『晋助くん』等と呼んでいた頃のと何ら変わりは無い。


「うぁ、」


耳元に口を寄せながら甚兵衛の裾から手を入れ脇腹を撫でる。
その身体にはあの頃よりもいくつか傷が増え、普通の女に比べれば随分と脂肪が少なくすらりとしているとはいえやはり当時に比べれば当然女らしく育っていて、不意に上がる嬌声も昔には想像さえ難かったものだ。
行われる色事はまだ幼く純粋で善悪の境すらなかった自分たちにとっては不釣合いな筈なのに。時折、何故か高杉はこの瞬間のに昔のの面影を色濃く見る。


「真っ赤だな。」


随分と赤く染まった頬に喉で笑って手を添えれば、は素直にうっとりとその手に顔を預けた。火照った頬に冷たい手が心地良いのかもしれない。

もう随分と記憶に遠い話だが、以前はくすくすと笑いながら『私は晋助の腕の中にいるときがきっと一番女らしいわ』と口にした。
それは当然のことだというのが高杉の感想だ。己以外の誰かがを女にするなどあっていいものか。
しかし今高杉に組み敷かれている、例えるならつまり『晋助の腕の中にいる』は何時よりも女の顔をしていると同時に何時よりも昔の面影を映し出す。
鬼兵隊から離れたは、女と過去に大部分を構成されるということだろうか。

(…いや、違ェな。)


「やっ、」


衣類を剥ぎ取り、愛撫に潤った秘穴に指を差し込めばまるで泣きそうな声。普段は滅多に涙など流さないも生理現象には弱いらしく、強い痛みや快楽には人並みにその瞳を潤ませる。
雫を溜めたせいでゆらゆらと揺れる瞳は昔とは違う。昔よりもあらゆる感情を乗せた、もっと複雑で難解な色をしている。

それを強くなったというのか汚れたというのかはわからない。その善悪に高杉は全く興味はない。
ただ単純にそこにある色を当然の如く受け入れている。色だけではなくという存在そのものを。もしかしたら受け入れているというよりは、空気が肺に染み入るように自然と馴染んだといった方が正しいかもしれない。




「あっ、あぁ、し、ん、」

「イきそうか。」


低く問えば肯定するかのように一筋涙を零した。頬に伝ったそれを舐めとればそれさえも性的刺激になったらしく、きゅう、と高杉の指を締め付けた。


「クク、ンなことに感じてんじゃねェよ。」

「だって、」


高杉に他意は無かったのだろうが、羞恥を煽るように反応を指摘されてはまた膣を収縮させた。そういや言葉でされんのも好きだったよなァと耳元で低く囁かれ、また反応しての繰り返し。


「しんすけ、」


いよいよ焦れたが高杉と視線を合わせ名を呼んだ。
緩慢に指で掻き回しながら何だと問う。わかっているくせに、高杉は問う。


「お願い、ちょうだい、しんすけ、」

「・・・上出来だ。」


頭を撫でながら腰を沈めれば、圧迫感には息を呑んだ。
こんな色事の最中なのに縋り付くように背中に腕を回す仕草は子供のようで。きっと高杉が知るよりもずっと昔のはこうして親の背中にも縋っていたのかもしれないと、らしくない己の想像に高杉は笑った。


「動くぞ、」

「う、んっ」


耳につくのは甘い嬌声とぐちゅぐちゅと卑猥な水音、なのに稀に高杉はこの行為の中に少女を見出だす。
欲求を吐き出すためだけでもなければ愛を囁きあうためだけでもなく、哀しみと痛みから逃れるためだけでもない。全てが交じり合って営まれる行為の中で、高杉の一挙一動に逐一反応を見せるはあまりに艶やかであまりに白い。


その不釣り合いさは初めて彼女を目にした時に感じたものにもよく似ていた。
郷愁の念に駆られているわけではないが、時に高杉はこのの表情や仕草が見たいがために行為を開始するのだ。