「あ、また子ちゃん、それお酒?ちょっと貸して。」

「え、ちょ、それ晋助様に持っていく・・・・って何やってんスか姐、気でも狂ったんスかアンタアアァァア!!」

「おい来島、うるせぇぞ何やって・・・・」


馬鹿だ、ぜってー馬鹿だろコイツ。











が珍しく傷を負って返ってきた。かすり傷なんてもんじゃねぇ、肩がざっくりぱっくり斬れてやがる。


「おめーよォ、手当てしねーと後に響くっつってんだろ。」

「大丈夫よこれぐらい・・・」

「おめーの大丈夫の範囲は広すぎんだよ。ぱっくり中身見えてんじゃねェか、あァ?」


口答えの多いに包帯を巻いてやりながらぐっと睨みつけると、大人しく、ごめん、と謝った。

が傷を負って帰ってくるなり目にしたのが来島の持っていた酒だったらしい。それを来島から奪うや否や、だばだばと傷にぶっかけ適当にふき取って後は放置。悲鳴をあげた来島を誰が責めることが出来るだろう。
本人曰く「アルコールで消毒しとけば平気よ」らしいが、どう見てもそんな傷じゃねェ。


「オラ、出来たぞ。」

「あ、ありがとう。」

「・・・で、誰だ。珍しいじゃねェか、お前がそんな傷作ってくるなんてよォ。」


あー、とかうー、とか言いながらは首を捻った。


「えーっとね・・・何だっけ、名前忘れちゃったんだけど、何とかっていう攘夷派の・・・あの、眼帯の男がリーダーやってるとこ・・・・」

「眼帯の男?」


そういえばそんな奴もいた、ような気はする。生憎、自分の利益にならねぇことは覚えてらんねータチなんでね。


「そんな攘夷派の下衆どもにやられるとはな、油断でもしたか。」

「いや、油断はしてなかったつもりなんだけど・・・まさか他に攘夷派がいると思わなかったのよ。あと、向こうの気合の入り方が尋常じゃなかったわ。」


やっぱり油断してたってことなのかしらね、と溜息を吐いた。

今日のの『仕事』は幕臣を一匹斬り捨てることで、それ以上でも以下でもなかった。勿論警護にあたっていた奴らとは殺り合っただろうが、まさか他にそんな大人数の、それも攘夷派の奴らと斬りあう破目になるとは思わなかっただろう。それは俺も同じだ。



「どっかから情報が漏れてたのか、私が尾行に気付かなかったのか・・・・」

「鼠がもぐりこんでるのかもしれねェな。武市に言やァ、一発で炙り出せんだろ。」

「・・・そうね、あの人、案外やり手だものね。」


そう安堵した様子のをぐいと引き寄せた。いくら強ェとはいえ、こうすると自分の腕の中に綺麗に納まる。悪い気分はしねェ。


「きゅ、急に何?」

「血と酒の匂いか・・・悪くねェな。」


包帯の巻かれた傷を軽く掴むと、びくりと身体が跳ねた。


「い、痛い痛い!痛いってほんと!」

「そうかい。そりゃ良かったなァ。」

「よ、良くない・・・(晋助、お、怒ってる?)」

「そんだけ痛みがあるんなら、あんな適当な処置してんじゃねーよ。俺が気付かなかったらそのまま放っとくつもりだったのか?」

「ご、ごめんって・・・・でも、いいのよ、それぐらいで。痛いぐらいの方が・・・・」


もう一度肩を掴むと、もう一度身体を震わせた。


「い”っ!ちょ、たんま、マジで痛い・・・!!」



(馬鹿言ってんじゃねェよ、痛いぐらいの方がいいだと?)



「どこぞの馬の骨とも知れねぇ奴に痛みなんか与えられてんじゃねェよ。そんなに痛いのが好きってんなら、俺がいつでも相手してやらァ。」


傷の上に唇を当てると、ふふ、と嬉しそうな声が聞こえた。



(身体に痛みを与えたところで、心の痛みがなくなるわけじゃあるめー)

(傷を作るなとは言わねぇ、だが出来た傷に縋るぐらいなら、いっそ俺に泣きついてくればいい。)




(痛みを消すことなんざできやしねぇ、だが誰よりも上手くお前に痛みを与えることは出来る)