「学校は嫌いじゃないけど、こーゆーのが面倒臭いのよね・・・・」
立ち入り禁止を示すロープなんて全く見えていないかのように(或いは本当に見えていないのかもしれないが)少女は堂々とソレを跨ぎ屋上のドアを開けた。
「・・・ぁ。」
思わず声を出してしまった彼女の名は。
お察しの通り、現在堂々サボり中、である。
後にサボり魔と呼ばれるようになる彼女の記念すべき初サボりはまさにこの時だったわけだが
『入学式をさぼる奴なんざてめぇとあのクソ餓鬼ぐらいだ。』
とは翌日の担任談。
そして先程が声を上げたのは、他でもないそのクソ餓鬼とやらがソコにいたからである。
「・・・ぁ?」
そっと扉を閉めたの存在に気付いたらしい、褐色の肌の男は顔を上げ振り向いた。
「ぁー・・・先輩の方ですカ?」
「ゃ、一年。」
一年かよ、入学早々目をつけられそうな格好の人だなぁとしみじみ思うの辞書には、もしかしたら『自分の行動を棚に上げる』という言葉はないのかもしれない。
「こっち座れよ。」
ぽんぽんと自分の隣を叩くピアスじゃらじゃらの偉そうな(よく言えばフレンドリーなのかもしれないが『初対面の相手に命令口調で話しかけるような奴とフレンドになんてなってたまるか』というのがこの時のの心境である)彼に
「はぁ・・・・お邪魔しマス。」
とりあえずおとなしく従った。
「ぁ、尻尾・・・・サイヤ人さんなんですね。」
「あぁ。てかその敬語やめろよ、タメだろ?」
敬語、とは
本来なら相手への敬意を示すものであるが、同時にソレは相手との距離感をも表す。
勿論、が初対面であり無駄に偉そうな彼に対して敬意を抱いているわけがない。
―――要するに、は彼に対して内心あまり関わりたくないという感情を抱いているのである。
「名前は?」
「、クラスは見てないからシリマセン。」
「俺はターレス。俺もクラスは知らねぇ。」
「・・・ターレス・・・」
呟いて、は何かを考え込むようにうつ向いた。
「・・・・・あぁ、割と有名なタラシの人。」
「てめぇ・・・・」
「ぁ、違いました?」
「・・・・・そういうあんたも割と有名じゃねぇか。」
「別に貴方と違って遊んでたわけじゃないもん。」
「俺の周りにも何人かいたもんな、にフラれたって奴。」
そう言って、ターレスはじっとを見つめた。
「・・・・な、何、」
「いや、さすが、可愛い顔してんなーと思って。」
「は?ちょ・・・何よこの手、離してよっ!!」
本能的に危険を察知して逃げようとしたものの、ターレスが腰に手を回してきたせいでソレも敵わなくなってしまった。
「何で初対面の奴に迫られなきゃなんないのよっ」
「んな暴れんなって、おとなしくしてりゃ気持ち良くしてやるよv」
さすが、女慣れしているだけあって声には艶がある。耳元で囁かれれば大抵の女は落ちそうなものだが
「あんた、初対面の女に殺されたいの・・・・?」
それとも大事なトコ潰されて一生不能者として生きる屈辱を味わいたいかしら?
恐ろしく引き攣った笑顔で返され、思わずターレスは引き下がった(へたれ
「もうちょっとちゃんと相手選んだ方が良いよ、こんな女襲おうとして死んだらもったいないじゃない。」
「本気で殺る気だったのかよ・・・」
黙ってりゃ見た目は良いんだからさ、と平然として付け加えるに、ターレスはますます興味を抱いた。
幸か不幸か、自分の行動及び言動がそのような結果を招いてしまったなんてことには気づいていない。
「変な女だな。」
「いくら落とせなかったからってそれはあまりにも失礼じゃアリマセンカ?」
「お前こそ黙ってりゃキレーな顔してんのに。」
「悪かったわね、口の悪さなら貴殿方には負けなくてよ。」
フレンドにすらなりたくないと思っている相手に迫られ、口説かれ、更には変だとまで言われてしまった。
「(真面目に入学式出れば良かった・・・)」
そりゃあんたに変だと思われようがどう思われようが関係ない、好かれようとも思わないけど。
全く失礼な人だとは溜め息を吐いても吐き足りない気分だったが、勿論ターレスはそんなことお構いなしである。
「残念だな。寧ろ俺、お前みたいなの結構好きだぜv」
掠め取るような頬への口付けにぎょっとするを見て、ターレスは心底楽しそうに笑った。
「じゃぁ、またな。」
そしてに反撃の間を与えることもなく、そのまま屋上から飛んで行ってしまった。
「・・・・な、何なのよアイツは・・・・!!!」
無論、それは単なる出会いに過ぎなかったのだけれど
これから先二人がソレ以上の関係になってしまうことなんて、この時の彼女が想像し得た筈もなかった。
さんの怒涛の高校生活はここから始まったわけでありますが
レタスさんが初対面のオンナノコにどう接するのか、考えるのは楽しかったけど物凄く難しかったです。
考えた割には唯のタラシのにーちゃんになってしまっていますが。何だか申し訳ない、で、す。