一日の運命は朝で決まる

特別共感するわけではないが、何となく納得してしまうフレーズではある。
朝寝坊をすればその日一日の計画が全て台無しになるような気がするし、飛び起きてしまうほどに夢見が悪いと一日テンションが上がらない。

しかしここ暫くはそんな感情を持ったこともないな―――と、朝瞼を上げた途端その視界に入ってきたモノとの距離に驚いたは、驚いてから何と無くそう思った。


「・・・・・・・・毎朝毎朝おどかしやがってコノヤロウ。」


天使のような寝顔というよりは、寝顔は誰でも天使なのだと言った方が正しい。
普段の彼を知っているからこそ、はそう思う。

彼の寝顔が天使のように特別無垢なわけではない、そもそも世の中に邪悪な寝顔を持つような人間がいないのだ。

熟睡しているにも限らずしっかり腕はの腰に回され、つい昨夜はひたすら熱としてを翻弄していた体は今は暖かく心地良い。


「・・・・ばーか。」
「誰が馬鹿だって?」
「っ、お、起きてたの!?」
「今起きたんだよ。」


まだ頭がはっきりしないらしいターレスは腕にぎゅう、と力を入れ、更に引き寄せたの肩に顔を埋めた。


「ちょ、起きたなら離してよ。」
「ヤダ。人の寝顔見て何考えてたんだよ。」
「・・・・・今起きたんじゃなかったの?」
「・・・・・・・・。」


沈黙は肯定である。


「やっぱ最初から起きてたんじゃん。」
「んなことどーでもいいからさ。何考えてたんだよ?」
「教えない。」
「ダーメ、に拒否権ねぇの。」


ターレスはの肩口から顔を上げ、大きな両手で白いの頬を挟んだ。

真っ黒の瞳に至近距離で見つめられて、何故だか黙っていてはいけないような、嘘を吐いてはいけないような、気持ちになる。


「・・・・別に、毎朝同じ気分だなぁ、って。」
「は?」
「だから、何か・・・・毎朝アンタの顔見て目覚ましてて、逆に見ない日の方が変な感じするし。
 そういうのって、私が滅茶苦茶タレのこと好きみたいで何だかなぁ、って。」


別段照れることもなくただ淡々ととんでもない台詞を吐くは心底不満気で、本人はそれがとんでもない台詞だという自覚はしていないらしい。


「・・・・・・・・ちょっと、教えてやったんだから何とか言いなさいよ。」


む、と目線を上げると、片手で口元を覆いこれでもかというほど目線を外しまくったターレスがそこにいた。


「何、どしたの?」
「おま、今のどう考えても・・・っ」


全く煮えきらないターレスには益々眉根を寄せる。


「・・・・何か照れてる?」
「ばっ、照れてねぇよ!!」
「じゃぁ何その反応。」
「っ、」


――負けた。完全に。
何だかんだで、例え体の面では主導権を握っていようとも、結局ターレスはには敵わない。
が不意にとんでもない発言をかました瞬間、嗚呼自分は彼女に心の奥の奥まで掻き回されているのだと実感する。


「・・・それってさー・・・・俺がいなきゃダメ、ってことだろ?」
「ダメっていうか、別にそこまで言ってないけど・・・・・・・・・・」


照れ隠しというよりは、単に自分だけが動揺したことが悔しくて、を動揺させてやろうとして口に出したと言う方が正しい。
効果はあったらしく、たっぷり三秒ほど考えてから、ははっとした。


「・・・・私、もしかしてとんでもない失言しちゃったのカナ。」
「いや、素晴らしい名言だったぜ。」
「じゃあさ、その名言に免じて、腕解いてくんない?」
「ヤダ。」


にこにこ、にこにこ


笑顔でお互いの動きを探りながら、しかしその瞬間は素早く!


ばっ

ぐいっ

どさっ


「〜〜〜〜っ」
「なーに逃げようとしてんだよ。誘ったくせに。」


ベッドから出ようとしたところで腕を掴まれ引き戻され、押し倒され。


「俺がいなきゃ駄目なんだろ?それだけ俺が好きなんだろ?なら、おとなしく抱かれとけ。」


ひいっ

甘い声より先に、そんな悲鳴にも似た声が上がって。


が見上げた先のターレスは、とてもとても上機嫌に笑っていた。











甘いですねー頭悪い話ですねー。
しかし短くこういう話が割と好きです。長いのも好きなので書きたいのですが、最近短いのしか書けなくて・・・精進しなくては。
タレさん大好きなヒロインのお話でした。